【無料コラム】第64回 黒鷲旗レポート
\n 決勝戦は女子がトヨタ車体クインシーズとJTマーヴェラス、男子がサントリーサンバーズと東レアローズの対戦となった。
女子決勝戦
\n\n奇しくも3月に行われたV・チャレンジマッチの再戦となった女子決勝戦。トヨタ車体の泉川監督が「JTさんの気合が違った」と言うように、主砲のシッティラック,オヌマーを欠きながらも、至るところから攻撃を仕掛ける新たなスタイルでプレミアリーグ勢を撃破した勢いそのままに、決勝戦でも若手エースの田中瑞稀を軸に攻め、トヨタ車体からリードを奪う。
\n\n\nこの試合もチームを引っ張り続けたトヨタ車体、竹田沙希
セッターの藤田夏未、リベロの佐藤澪を欠くトヨタ車体も主将の竹田沙希を軸に持ち前の粘りとガッツあふれるプレーで得点し、中盤、終盤にはJTをリードしたが、17-21からJTは途中交代の金杉由香の攻撃やブロックが冴え、連続得点で一気に逆転。最後は奥村麻依のクイックが決まり、終盤の逆転劇で第1セットを先取した。
\n JTは「絶対に1年でV・プレミアリーグに戻る…」、そう誓って臨んだV・チャレンジマッチで、初戦はフルセットの末に勝利したが、翌日の2戦目、竹田、藤田の気迫の前に1-3で敗れ、昇格を果たすことはできなかった。
\nチームを鼓舞し続けてきたJT井上琴絵
当然ながら落胆も大きく、リベロの井上琴絵が「まず1人1人の気持ちが戻らなかったし、チームとして1つにまとまることもできない。黒鷲旗に向けて頑張らなきゃ、と思ってはいても、バラバラの時期があった」と言うように、立て直しは決して容易いことではなかった。
\n それでも井上や位田愛、中村亜友美が中心となりチームを鼓舞し、尾崎監督が掲げる「当たり前のことを当たり前に徹するバレー」ともう一度向き合った。その結果が、ようやく一つの形になって表れたのが黒鷲旗の決勝だった。
新人もベテランもそれぞれが果たすべき役割に徹する。トヨタ車体のお株を奪う粘り強いディフェンスに加え、途中出場のセッター、横田千里の丁寧な配球もチームに更なる勢いを呼び込み第2セットからはトヨタ車体を圧倒。
\n\n(トヨタ車体の)竹田主将が「引いたり受けたりできる立場じゃないのに、完全に相手の力と勢いに押されてしまった」と振り返ったように、完全なJTペースで試合を進み、第3セットはスタートからの7連続得点という圧巻ぶり。
\n\n\nJT歓喜の瞬間
終始リードを保ったまま終盤を迎え、芥川愛加のスパイクでマッチポイントとすると、最後は「“アウトだ”、と思ったので決まった瞬間は自分でもポカンとしてしまった」と言う横田のサービスエースで25-11、3-0のストレートで勝利したJTマーヴェラスがV・チャレンジリーグのチームとして初の黒鷲旗大会女王となり、V・チャレンジマッチのリベンジを果たした。
\n\n\n今大会限りで勇退する尾崎監督の胴上げ
今大会限りで勇退する尾崎監督を勝利の胴上げで送り出す、最高の餞別(せんべつ)となっただけでなく、主将の上屋敷綾が「来シーズンにつながる大きな自信になった」と振り返ったように、得られたものは大きい。
\n\nだが、これで満足するわけにはいかない。チーム全員が抱く思いを、リベロの井上が代弁した。
\n\n「V・プレミアリーグのチームと(黒鷲旗で)対戦して、勝てたことで、また一段とプレミアに戻りたい、という気持ちが強くなりました。2015/16シーズンこそ、絶対に戻りたいです」
\n\n悔しさを糧に。新たなスタートが切られた。
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男子決勝戦
\n\n\n2015/16V・プレミアリーグファイナルで準優勝に終わったサントリー
男子決勝戦はV・プレミアリーグのファイナルでは、大熱戦の末にJTサンダーズに敗れ、惜しくも準優勝に終わったサントリーと、レギュラーラウンドでは7位に沈みV・チャレンジマッチに出場した東レが対戦。
\n\nこの大会を最後にユニフォームを脱ぐ選手が多くいる中、東レで7シーズンに渡りプレーしたボヨビッチも今大会限りでの現役引退を表明。東レの小林敦監督が「チームの全員が1試合でも長くデキとプレーしたい、という気持ちで戦っている」と言うように、7年という長き歳月をチームのために尽くしてくれたボヨビッチ,デヤンを最高の形で送り出すべく、富松崇彰や鈴木悠二の活躍で第1セットを先取する。
\n\n\nこの試合も勢いの止まらなかったサントリー、エバンドロ
しかしサントリーも、V・プレミアリーグのファイナルで味わった悔しさがあり、来シーズンこそは日本一という目標とともに、黒鷲旗はシーズン最終戦であり、2015/16V・プレミアリーグ制覇という大きな目標を達成するための始まりでもある。第2セットからはエバンドロ,グエッラにボールを集め、サントリーが巻き返しを図る。続けてレフトの栗山雅史の攻撃や、ミドルブロッカーの山村宏太、鈴木寛史のブロックも効果的に決まり、さらには主将の山村が「NEXT4がいい流れをつくるきっかけになるサーブを打ってくれた」と冗談交じりに話したように、ピンチサーバーで投入されたルーキーの柳田将洋が強烈なジャンプサーブでエースを奪う活躍で流れを引き寄せ、2、3セットを連取。
\n\n\nサントリー歓喜の瞬間
東レもボヨビッチの攻撃を軸に応戦するが、富松が「高さもあってパワーもある。とにかく手が付けられない、というのが正直なところ」というエバンドロの攻撃が次々決まり、第4セットもサントリーがリードを保ち、終盤へ。エバンドロのバックアタックでマッチポイントとすると、最後は鈴木のスパイクで25-20、セットカウント3-1で勝利したサントリーがV・プレミアリーグの雪辱を晴らし、今シーズン最後を締めくくるタイトルを手にした。
\n\n\n監督として、日本で初優勝となったジルソン監督
監督として初めての日本一になったジルソン,ベルナルド監督は選手への感謝を述べた後、日本語で「これからも本当に強いサントリーを作るので、信じて下さい」と応援してくれたファンに向けたメッセージを残した。
\n\n\n今大会限りで現役引退を発表した東レのボヨビッチを、サントリー、東レ両チームの選手が胴上げ
そして、最後にはサントリー、東レ、両チームの選手が1つの輪になり、ボヨビッチを胴上げ。V・プレミアリーグ在籍の外国籍選手の中で、初となる同一チームでの7年在籍という快挙と、日本のバレーボール界にもたらしてくれた功績、温かな人柄に感謝を込めてプレーした年数と同じ、7回の胴上げでボヨビッチを称えた。
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