【無料コラム】黒鷲旗・決勝レポート
\n 5月1日から6日間。決勝まで勝ち進めば実に6連戦という熾烈な日程を勝ち抜き、トヨタ車体クインシーズが初の女王となり、男子はパナソニックパンサーズがV・プレミアリーグに続いて二冠を達成した。
トヨタ車体クインシーズ
\n\n\n\n今季、V・プレミアリーグでは初の四強入りを果たしたトヨタ車体。選手一人ひとりが「与えられるのではなく、自分で考える」をモットーとし、明確なコンセプトに基づいて、ラリー中も助走に重きを置き、高い打点からしっかり打ちきる。決して派手ではないが、個々の役割がハッキリと打ち出されたスタイルが確立されたのが、躍進を果たした一つの理由でもあった。
\n\n\n\nセミファイナルリーグ戦の初戦こそ、久光製薬にストレートで敗れたものの、岡山シーガルズ、東レアローズを打破し2勝1敗で終えたのだがセット率で及ばず、決勝進出はならず。その悔しさが「黒鷲旗では絶対に日本一になろう」という原動力になっていたとキャプテンの竹田沙希は明かす。
\n\n「世界クラブ選手権に出場する久光製薬が(黒鷲旗には)出ないので、本当の日本一ではない、と見る人もいるかもしれません。でもどんな状況であれ、戦う私たちにとっては日本一になるチャンスであり、勝負の場であることは変わらない。Vリーグの悔しさを晴らして、次のシーズン、次のリーグにつなげるために何が何でも勝つという気持ちで臨みました」
\n\n\n\n危なげなく勝ち進み、決勝はV・プレミアリーグの3位決定戦で敗れた東レとの再戦。第1セットからセッターの藤田夏未がライトの山田真里、ミドルブロッカーの矢野美子、平松美有紀をうまく使って東レのディフェンスをかく乱。竹田、山田(真)、リベロの梶原雪路を中心に安定したレシーブ、ブロックからの切り返しを確実に制し、1、2セットを連取した。
\n\n追う東レも2セットを連取されはしたが、今シーズン、リーグではフルセットに持ち込めば絶対負けない。そんな粘り強さを何度も発揮してきた。黒鷲旗の決勝も同様に、第3セットは迫田さおりや高田ありさ、中盤から出場したペーニャ,ヨンカイラの活躍で奪取し、2-1と盛り返す。
\n\n\n\n このまま東レが第4セットも奪うのか。そんなムードが漂う中でも、トヨタ車体の泉川正幸監督は冷静だった。
\n「相手の攻撃は、最終的には迫田しかない。2枚ブロックを揃えて、後ろにレシーバーを配置する。3位決定戦ではうまく対応できませんでしたが、(黒鷲旗の)決勝では効果をもたらしました」
迫田のスパイクをミドルブロッカーの矢野、平松がワンタッチをとって威力を弱め、チャンスボールからの攻撃はカナニ,ダニエルソンが決める。リーグを通して培ってきた役割分担を、決勝戦でもいかんなく発揮。最後はカナニのスパイクが鮮やかに決まり、トヨタ車体が初の頂点へ。
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\n 第3セットから両足がつっていたという藤田は、試合後「(V・プレミアリーグの)3位決定戦と同じ相手に、今季最後の試合でリベンジできてよかった」と笑顔で優勝の喜びを噛みしめた。
パナソニックパンサーズ
\n\n\n\n 男子決勝は、パナソニックとJTサンダーズ。奇しくも、V・プレミアリーグの優勝決定戦と同じ組み合わせが実現した。
\n 優勝決定戦で敗れた直後から「黒鷲旗も次のリーグへ向けたスタート地点と思って臨む」と越川優が決意を示していたように、豊田合成トレフェルサ、堺ブレイザーズを打破し、決勝へコマを進めたJTに対し、パナソニックはこの大会限りで7年に渡りチームの指揮を執った南部正司監督が勇退する。
\n「全日本監督就任のはなむけに、最後は勝って有終の美で終わろう」
\nリーグに続いての二冠達成に向け、リーグ随一とも言える攻撃力を武器に、こちらも危なげなく勝ち上がり、昨年に続いての決勝進出を果たした。
第1セットはリベンジに燃えるJTが先行。リーグの決勝と同様に、チーム最大の武器であるイゴール,オムルチェンのサーブ、スパイクで得点を重ねる。さらにパナソニックのセッターである弟との兄弟対決となった、JTのセッター、深津旭弘がセンター線をうまく絡めて攻撃を分散させ、競り合いながらも第1セットはJTが25-23で先取した。
\n\n\n\nしかし第2セットに入ると、パナソニックがJTを猛追。南部監督が「今季はルーキーの深津(英臣)で勝負する1年。若いセッターを成長させるためにも、チームにとって不可欠だった」というダンチ,アマラウが攻守に渡る活躍でチームをけん引する。加えて、清水邦広、福澤達哉といった日本が誇る両エースの攻撃と、ミドルの白澤健児、山添信也を中心としたブロックから守護神・永野健を軸にしたディフェンス。高い「個」の力を結集させたチーム力でJTを上回り、2、3セットをそれぞれ25-20、25-19で連取した。
\n\n\n\n2-1で迎えた第4セットもダンチ、福澤、清水の攻撃に加え相手のイゴール、越川をブロックで立て続けに仕留めて波に乗り、最後はワンポイントで投入された伊東勇樹がワンタッチをとったボールを、同じくワンポイントで出場のリベロ・山本拓矢がトス。レフトから福澤が豪快に打ち切ったスパイクがJTコートに突き刺さり、黒鷲旗は2年ぶり、そしてV・プレミアリーグに続いての二冠を達成した。
\n\n 優勝の余韻が残るコートで、南部監督が胴上げで宙に舞う。
\n それぞれが、胸に秘める思い。福澤はこう言った。
\n「内定(選手)の頃から我慢して試合に使ってもらったおかげで、ここまで成長させてもらった。いつも背中を押してくれる監督でした」
長い戦いも、いよいよ閉幕。多くのチームが新体制となり、迎える来シーズン。パナソニックの牙城を崩すチームは現れるのか。楽しみは増すばかりだ。
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