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【コラム】V・プレミアリーグ 男女ファイナル3展望~勝敗を左右する各チームのセッターに注目!

激闘を繰り広げた今シーズンも、いよいよクライマックスへ――。3月3日、4日には熊本県立総合体育館でファイナル進出をかけ、男女2チームが激突する「ファイナル3」に臨む。この舞台に立てるのは、わずか4チーム。

男子は豊田合成トレフェルサとJTサンダーズ。女子は久光製薬スプリングスとトヨタ車体クインシーズ。豊田合成、久光製薬は昨年もファイナル3を経験しているが、JT、トヨタ車体にとっては初めてのファイナル3。V・レギュラーラウンドの成績も、これまで積み重ねたポイントも関係ない。まさに一戦必勝の戦いを制し、ファイナルへと駆け上がるのはどちらのチームなのか――。

過去数年の勝率や、今季の対戦成績、それぞれのチームのポイントゲッターや、公式帳票上で最も高い数字を残しているスキルの項目。勝敗を決するうえで注目すべき点はいくつもあるが、あえて1つ、ファイナル3の勝敗を左右するポイントとして注目してほしいのが各チームのセッターだ。

<V・プレミアリーグ女子 ファイナル3~久光製薬スプリングス vs トヨタ車体クインシーズ>

V・レギュラーラウンドを無敗で勝ち上がった久光製薬は、今シーズンからキャプテンを務める栄絵里香と、主将としても優勝セッターとしても豊富な経験を持つ古藤千鶴を併用し、これまでの試合に臨んできた。それぞれ持ち味は異なり、栄でスタートし、古藤がリリーフする試合もあれば、古藤でスタートし、栄がリリーフとして流れを変える試合もある。どちらかといえばスピードを重視する栄が入るからこそ生きる攻撃があり、相手に追い上げられる劣勢の場面では全体を立て直す古藤の経験が生きる。まさに、それぞれの長所を生かし、スパイカーの長所を生かしてきた。



ミドルブロッカーのアキンラデウォ,フォルケの得点能力やブロック力の高さに注目が集まりがちだが、すべての得点をアキンラデウォが決められるわけではなく、ローテーションごとに得意な攻撃や、生かせる展開は異なる。当然ながら相手ブロックやレシーブにも目と意識を配らなければならず、栄も「アスさん(古藤)がいることですごく助けられてきた」と言うように、試合中も2人の司令塔は積極的に声をかけ合い、どちらがコートに立っていようと、共に同じ試合を戦っている。



一方のトヨタ車体は、ここまでの大半は3年目の比金桃子がセッターとしてコートに立ち続けて来た。久光製薬の栄の2学年下、東九州龍谷高校で全国制覇を経験するなどキャリアは豊富で、昨年末の天皇杯皇后杯全日本バレーボール選手権大会でも優勝。ミドルを使う、スピードを生かす、といった独自のカラーを持つのではなく「アタッカーによって欲しいトスが違うのは当たり前で、そこに自分がどう合わせられるかが一番大切だと思っている」と言うように、相手のディフェンスや自チームのアタッカーの状況を見極め、ここでトスがほしい、と思って助走に入ってくる選手に迷わず託す。チーム内で最も攻撃回数、本数が多いネリマン,ゲンシュレックがポイントゲッターであるのは確かだが、ファイナル6では荒木絵里香、渡邊彩の両ミドルブロッカーも機能した。コンディションのいい選手を見逃さず、ここぞという場面で使う。比金のトスワークにも注目だ。



<V・プレミアリーグ男子 ファイナル3~豊田合成トレフェルサ vs JTサンダーズ>

2014/15シーズン以降、優勝した2015/16シーズンも含め、今年で4シーズン連続してトップ3入りを果たした豊田合成。昨シーズンまでは多くの試合で内山正平がセッターを務めて来たが、今季は開幕から前田一誠がコートに立ち、V・レギュラーラウンドでは内山と併用しながらも、ファイナルステージでは前田が司令塔として戦うスタイルが定着してきた。



イゴール,オムルチェンの打数が多く、フィニッシュを託されるのも大黒柱であるイゴール、という場面は確かに少なくない。だが、だからといってイゴールだけが決めているのではなく、この場面で得点を取るためにどんな布石を打つか。それこそがチーム力の高さや層の厚さを見せるものであり、セッターの力、個性でもある。前田自身も「イゴールだけでなく、イゴールが決めるまでの過程を見てほしい」と言うように、サイドアウト時に限らず、ラリー中も積極的にミドルを選択し、打数以上にその存在感は際立っている。ファイナル3でもどんな組み立てを展開するのか。ぜひ、注目してほしいポイントだ。



優勝した2014/15シーズン以来の頂点を目指すJTのセッターは深津旭弘。昨シーズンからキャプテンも務め、ルーキーや大学在学中の新加入選手、若手が多いチームを束ねる精神的支柱でもある。攻撃の軸は今季から新加入のエドガー,トーマスで、豊田合成のイゴール同様、確かにエドガーの打数は多いが、強みはそれだけではなくファイナル6に入ってからはすべての試合でチームとして高いスパイク決定率を残している。まさにそれこそが、相手の奇をてらうような意表をつく攻撃ではなく、たとえ2枚ブロックがついてきてもアタッカーが打ちやすい打点で打たせることを信条とする深津の持ち味だ。

丁寧なトスワークや、周囲への気配り、リーダーシップもさることながら、ファイナルラウンドでは勝負所でのサーブ、ブロックポイントも光る。特にファイナル6の豊田合成戦では1-1で迎えた第3セット、イゴールのサーブで先行された状況から「ここで行かれたら負ける、と思って、もう一度チームに戦う気持ちを戻そう、と思い切り打った」という自らのサーブで流れを変えた。トスを上げるだけがセッターではなく、コートやゲームをコントロールする。まさに「司令塔」と言うべき姿を見せられる選手だ。



誰が打って、誰が決めた。結果だけがバレーボールの面白さではない。決めるまでの展開がどうなって、誰が拾ってどうやってつなぎ、なぜ、この攻撃を選択したのか。そんなふうに1点を「なぜ」と紐解けば、楽しさは一気に広がるはずだ。

ファイナル3は、まさにそんなバレーボールの魅力がつまった舞台になるのは間違いない。それぞれのチーム、そしてセッターの持ち味に注目し、また新しい楽しさをぜひ味わってほしい。

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