コラム

【コラム】V・プレミアリーグ男子~ファイナル6展望~

2017/18V・プレミアリーグはV・レギュラーラウンドが終了し、2月10日からはいよいよV・ファイナルステージ ファイナル6がスタートする。

現時点での優勝候補筆頭はやはりV・レギュラーラウンド1位のパナソニックパンサーズだろう。11連勝を含む18勝3敗、ポイント52という圧倒的な強さで首位を独走した。昨季は怪我のためシーズン途中に離脱したオポジットの清水邦広が今シーズンは絶好調。清水、福澤達哉、ミハウ,クビアクというサイド3人を主体とした攻撃力はリーグ随一だ。加えて、ブロックとディグのシステムの完成度も高く、なかなかボールが落ちない。攻守ともに隙がない上、今シーズンはサーブも大きく改善された。昨シーズンは8チーム中7位だったサーブ効果率が今シーズンは2位まで上昇。クビアク、清水の強力なジャンプサーブに加え、深津英臣、白澤健児が多彩なサーブを操って相手を揺さぶるなど、フローターサーブも相手の脅威となっている。昨シーズン、好調なスタートを切りながら、主力選手に怪我が相次ぎ、その穴を埋めきれずに後半失速したが、今シーズンはその教訓が生かされている。パナソニックはレギュラー7人のうち、清水、福澤、白澤、永野健の4人が30代。川村慎二監督は、「リーグは長期的なものなので、ベテラン選手には目に見えない消耗が絶対にある。そこで若手にしっかりと頑張ってもらいたい」と語っていたが、その通りに2レグ途中からは2年目のセッター関田誠大や1年目のアウトサイド久原翼を起用しながら勝ち続け、終盤戦ではオポジットの今村貴彦、ミドルブロッカーの兒玉康成、リベロの伊賀亮平といった若手を積極的に起用した。それが功を奏し、主力選手に大きな怪我がなく、若手がある程度試合経験を積んだ状態でファイナル6を迎えられる。自ずと日々の練習のレベルや競争意識も高まり、好循環が生まれている。



このように盤石に見えるパナソニックだが、そのパナソニックにレギュラーラウンドで唯一2勝1敗と勝ち越しているのが2位の豊田合成トレフェルサだ。スピードあふれる攻撃を繰り出すパナソニックを破るために必須の武器がサーブ。それも、少々サーブレシーブを乱しても強力なサイド陣が得点につなげてしまうため、直接サービスエースを奪うか、まともにスパイクを打てない状態にまで崩さなければならないが、豊田合成はそのサーブ力を備えている。今シーズンはイゴール,オムルチェン、高松卓矢、傳田亮太の強力なジャンプサーブから連続得点につなげる場面が多く、サーブ効果率は1位。セット中盤までリードされていても、サーブをきっかけに流れを変えることができる。今シーズンは大黒柱のイゴールを怪我で欠いた時期もあったが、その期間を3勝4敗でしのいだことが2位通過につながり、選手の自信にもなった。イゴールがいない分、高松のレフトからのバックアタックを組み込むなど、攻撃のバリエーションが増え、選手個々の攻撃参加の意識も高まった。イゴールの復帰戦となった12月の天皇杯では、まだ本調子でないイゴールが相手ブロックに捕まる場面があったが、高松やクイックを使って目先を変え決勝まで勝ち進んだ。セッターの内山正平は、「今年は選べる手札が増えたので、(イゴールが止められても)別にヤバイという感じはなく、『次はこうやって決めよう』というのが湧き出てきたので、イゴールなしでやっていた期間が活きているのかなと思った」と語っていた。持ち前のサーブ力と選択肢が増えた攻撃を存分に発揮できれば、優勝の可能性は十分にある。



昨シーズンの覇者・東レは3位でのファイナル6進出となった。新加入のオポジット、ギャビン,シュミットが肩や右足の怪我などで万全でない期間が多く、V・レギュラーラウンドは我慢の戦いとなったが、2セットダウンから逆転勝ちするなど、フルセットの試合は4戦全勝で、チームカラーの粘り強さは健在だ。ファイナル6にはギャビンも状態を上げてくると見られる。昨季優勝の原動力となったミドルブロッカーの攻撃が今シーズンはマークされているため、ギャビンや米山裕太、鈴木悠二、そして3レグに攻撃力の高さを見せた新加入の戸嵜嵩大らサイド陣の決定力が鍵になりそうだ。



V・レギュラーラウンド4位につけたのはJT。オポジットのエドガー,トーマスやアウトサイドの山本将平、リベロの井上航という新戦力が主力となり、1月からは新加入した小野寺太志、武智洸史も早速の出場。ガラリと変わった顔ぶれで昨シーズンの7位から4位に浮上した。ただ、メンバーが大きく変わったゆえのもろさが出ることもあり、V・レギュラーラウンドでは上位3チームに全敗、下位チームに全勝と白黒ハッキリ分かれた。ヴコヴィッチ,ヴェセリン監督は、「メンバーが変わった分、最初は完成度が高くなく、1レグは上位3チームとの力の差を感じたが、試合をこなすにつれて完成度が高まり、3レグでは上位との力の差は縮まりしっぽはつかめてきている」と語った。爆発力を秘めたフレッシュなチームが、セッター深津旭弘を軸にどれだけ融合できるかが、上位を破る鍵になるだろう。



5位のサントリーサンバーズ、6位のジェイテクトSTINGSも、新戦力がキーマンになりそうだ。サントリーはセッター大宅真樹が3レグから先発出場している。昨年末にチームに合流したばかりだが、コンビに苦労している様子をあまり見せず、苦しい体勢からもスパイカーの打点を活かすトスを丁寧に上げ続けている。課題だったアウトサイドの栗山雅史、藤中謙也の決定力が増せば、オポジットのエスコバル,ヤドリアンに頼らない攻撃で勝機を見出せる。また、サーブレシーブでの直接失点を減らし、逆にサーブで攻めることが上位浮上の必須条件となりそうだ。



ジェイテクトは、オポジットに清野真一、アウトサイドにカジースキ,マテイと浅野博亮という布陣でスタートしたが、その後、カジースキをオポジットに置くなど試行錯誤を重ねた。最終的に、3レグは現役高校生の西田有志をオポジットで起用すると、その西田が目覚ましい活躍を見せた。それでも3レグは3連敗スタートとなったが、カジースキがチームに喝を入れ、ミーティングで選手たちが思いをぶつけ合ったことで流れが変わり、サントリー、東レに連勝してファイナル6進出を引き寄せた。浅野を中心に粘り強く拾ってつないでカジースキや西田が決めるという展開に持ち込めれば、台風の目になるかもしれない。



ファイナル6は、V・レギュラーラウンドの順位によって持ち点差があるため下位のチームが不利ではあるが、昨シーズンは5位通過だったジェイテクトがファイナル3に進出したように、この終盤戦に照準を合わせられたチームが一気に勝ち上がる可能性は多いにある。1戦1戦の重みが増すファイナルステージで、勝負強さを発揮するのはどのチームか。2月10日、ついにファイナル6がスタートする。

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