【データコラム】ブレイク戦略
こんにちは、Vリーグ公認アナリストの宮脇です。
前回はサイドアウト局面での戦略を解説しましたが、この記事ではブレイクを取る確率(以下、ブレイク率)を高めるための戦略について解説します。
今回ポイントとなる数字は「1」です。
ブレイクとは、サーブ側のチームが得点を取ることです。
バレーボールではブレイク側のチームの方が確率的には不利になります。ブレイク率はおよそ3割程度で、残りの7割はサーブレシーブ側のチームが得点することになります。
ブレイク率を高めるためのポイントとして「サーブ&ブロック戦略」「スムーズな攻撃転換」について解説していきます。
サーブは第「1」の攻撃
サーブは最初の攻撃です。サーブを打つ際の狙いとして
①得点すること
②相手のサーブレシーブを崩すこと
③相手アタッカーの攻撃参加を遅らせること
が挙げられます。
緩いサーブを打ってしまい、相手チームに万全な状態で攻撃されては不利になるので、サーブレシーブを崩して少しでも相手の攻撃パターンを減らしブロックでマークする的を絞ります。的を絞ることで、ブロッカーはしっかりと2枚または3枚でブロックにつくことができます。
サーブの狙いを決めるポイントは、「サーブレシーブの返球が悪い選手」、「相手チームのサイドアウト率が低いコース」、「トス配球に特徴のあるコース」などが挙げられます。トス配球に特徴のあるコースとは、例えば「ライト側にサーブを打ったらライトにトスを上げる傾向にある」といった特徴です。サーブの狙いはチームの戦略が見え隠れするプレーなのでなぜその選手をサーブで狙っているのかにも注目して見てください。
どうしてもネットギリギリや、コートギリギリを狙ってサーブミスしてしまうこともあります。
全てのミスを許容できるわけではありませんが、相手が攻撃力の高いローテーションの場合、緩いサーブを入れても簡単にサイドアウトを取られてしまいます。そのような場合は、リスクを取って強いサーブを打ち込む場合もあります。
堺ブレイザーズのブレイクシーン(11/30 対WD名古屋戦)
相手の攻撃を「1」人でも減らすためのサーブ戦略
次に戦略的なサーブについて解説します。
例えば、セッターが後衛で前衛に3人のアタッカーがいるとします。その際、レフト側のアタッカー(下図の場合、赤OH)がサーブレシーブをした時のトス配球がライトに6割、ミドルに3割、レフトに1割だったとすると、サーブで前衛レフト(赤OH)の選手を狙い、ブロックは前衛レフトのマークは薄くして、ライトとミドルにブロックの的を絞ります。その時、ライトブロッカー(OP)はややコートの中央に構えミドルの速攻に対してブロックを跳ぶ準備をしておきます。
このように事前情報をもとにアタッカーを「1」人でもマークから外すことができれば相手の攻撃を受ける局面であっても優位に立つことができます。
もちろん、事前情報を元に戦略を立てますが予想に反して確率の低いレフトを使ってくるケースもあります。
その場合はブロッカーの臨機応変な対応が試されます。
スムーズな攻撃転換の第「1」歩、リロードに注目
サーブでブロックの的を絞り、ブロックで相手のブロックコースを塞ぎ、スパイクレシーブで相手の攻撃決定を防いだとしても、まだ終わりではありません。しっかりアタックで切り返し得点に繋げなければいけません。
ブロック&ディグの守備隊形からスムーズに攻撃に転じるためにはアタッカーがに助走距離を確保する必要があります。この助走距離を確保する行為をここではリロードと表現します。リロードとは、「銃の弾を込め直す」という意味で、ブロックを跳んでいた選手は、攻撃の準備のためにネットから離れ素早く「リロード」します。
このリロードを行わないと、せっかく相手のスパイクをレシーブしても攻撃ができなかったり、強いスパイクが打てず逆に相手に得点を許してしまいます。
ぜひ注目して欲しいシーンは、セッターが前衛にいて前衛アタッカーが二人しかいない時のミドルブロッカーのリロード動作です。特に女子の場合、相手のレフトから攻撃された際、どのような攻撃を仕掛けるかが重要です。男子と違ってライトからのバックアタックがないチームが多いので、ミドルブロッカーは速攻に入るだけではなく、そのままライトから攻撃するケースもあります。
男子の場合だと、相手の攻撃に対して3枚ブロックを飛んだ後のサイドの選手の動きにも注目です。本来レフト側でプレーするOHの選手がライト側でブロックを跳び終わった後に、走って本来のレフト側に戻り攻撃に転じます。
NECレッドロケッツ・荒谷選手のリロード ウルフドッグス名古屋・高松選手のリロード
レシーブは攻撃の「1」球目
サーブやブロックは直接得点にできるプレーですが、レシーブはそれだけでは得点にすることができません。
レシーブの目的は攻撃に転じ得点することです。レシーブして終わりではないので、レシーバーはどこに返球すれば効率よく攻撃を展開できるかを考えなければいけません。
アタッカーはブロックを跳んだ後にリロードをするので、リロードする時間を確保しなければいけません。レシーブが攻撃に転じることを目的とするならば、「1」球目のレシーブはアタッカーが十分にリロードできるだけの余裕を持った返球でなければいけません。レシーブの返球位置だけではなく、2本目を触るセッター、3本目でスパイクを打つアタッカーのことを考えてレシーブできているかどうかがブレイク率を高める秘訣ではないかと思います。
今回のコラムでは、第1の攻撃であるサーブ、攻撃転換の1歩目のリロード、そして1球目であるレシーブに注目し「ブレイク戦略」をみてきました。決して目立つプレーではなくても、その瞬間に選手が何を考えて動いているのか、会場だけでなくDAZN等の放送で見る際にもぜひ注目してみて下さい。
次回のデータコラムでは、2球目または3球目に関する「基本的な攻撃の組み立て方とその呼び方:効果的な攻撃とは」について考えてみます。皆さんが応援しているチームがどのような攻撃パターンを持っているかぜひ確認しておいてください!
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<Vリーグ公認アナリスト>
宮脇 裕史(Hiroshi Miyawaki)
2007-2014 JTマーヴェラス コーチ兼アナリスト
2014-2016 バレーボール・女子日本代表 サポートアナリスト
2017- バレーボール女子アンダーエイジカテゴリー日本代表・アナリスト
(公益財団法人日本バレーボール協会)
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