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【データコラム】攻撃の”組み立て”とは

こんにちは、Vリーグ公認アナリストの宮脇です!

今回は、基本的な攻撃の組み立て方について解説していきたいと思います。どのような攻撃を組み合わせたら効率よく得点を獲ることができるのか、アナリストの目線からわかりやすく解説していきます。

 

今回のキーとなるポイントは「  」です。

 


 基本的な攻撃の種類


まずは、基本的な攻撃の種類を紹介します。ここではわかりやすいように前衛アタッカーのみに着目していきます。大きく分類すると、アタッカー同士が交差しない「パラレル」、アタッカーが助走するときに交差する「クロス」に分けることができます。




そのうえで、攻撃する位置によって「スプレッド」や「オーバーロード」といった攻撃の組み立て方があります。
スプレッドとは「広げる」という意味で、3人のアタッカーのうち、ミドルの選手はコート中央付近で攻撃を仕掛け、サイドの選手はコート幅いっぱいを使った攻撃パターンです。

オーバーロードとは特定の選手を活かすための攻撃方法で、「比重をかける」という意味の通りコートの片方にアタッカーを偏らせて、相手のブロッカーを引き寄せます。下図のオーバーロード①はレフト側で二人のアタッカーを攻撃参加させて、ライト側にいるアタッカーを活かそうとしています。反対に、オーバーロード②はライト側にアタッカーを偏らせてレフト側のアタッカーを活かそうとしているパターンです。






 効果的な攻撃にはトス配球が重要


セオリーとしては、ライト側のアタッカーを活かすためにはミドルをBクイック(セッターの前方2~3m付近で打つ速攻)に入らせます。

しかしここで重要なのは、トス配球の割合です。
もしオーバーロード①のパターンで、9割ライトにトスを集めていたとすると、当然相手のミドルブロッカーはライトを警戒し、囮のBクイックにはついていかず、コート中央にステイ(動かないこと)します。そうなるとオーバーロードの攻撃組み立ての効果が薄れてしまうので、Bクイックの割合も増やし、相手のミドルブロッカーを惑わせるようなトス配球にする必要があります。



ミドル(JT/小川杏奈選手)がBクイックに入り、ライト(JT/ドルーズアンドレア選手)から攻撃




 相手のブロックシステムに合わせた攻撃戦略


効果的な攻撃を組み立てるためには、相手のブロックシステムを理解する必要があります。


ブロックシステムと攻撃の組み立てに注目(12/8 パナソニック 対 東レ 第4セット)

 

 

ざっくりと解説すると、相手がバンチブロック(コート中央に3人のブロッカーが集まる)で構えている場合、スプレッド攻撃を仕掛けるのが効果的です(下図:対バンチブロック)。バンチブロックの場合だと、アンテナ付近にスペースができやすい為です。

また相手のサイドブロッカーがアンテナ付近まで開いているスプレッドブロックの位置にいた場合、一方のサイドにアタッカーを偏らせ、反対サイドから攻撃を仕掛けるのが有効ですが、空いているスペースに切り込むとさらに効果的です。もしくは、ブロッカー同士の空いているスペースで速攻を仕掛けるのも有効ですね(下図:対スプレッドブロック)。

 

次に、相手のミドルブロッカーが攻撃側のミドル対してフロント(攻撃に合わせて正面に移動)してきている場合、オーバーロードの形が効果的で、おとりのミドルとは遠いサイドから攻撃を仕掛けるとブロックが1枚になりやすいです(下図:対フロントしてくるMB)。

 

目の前のアタッカーをマークするマンツーマンブロックの場合だと、アタッカーが交差する攻撃が効果的です(下図:対マンツーマンブロック)。Vリーグだと完全なマンツーマンブロックはどこも使っておらず、自身の持ち場(ゾーン)を守るブロックをしていますので、アタッカーをクロスさせてもノーブロックになるケースは少ないです。

 





今回は基本的な攻撃の組み立て方について解説してきましたが、これらは基本的な考え方に過ぎず、相手のブロックシステムに加えて、相手の身体的な特徴や、ブロック技術の特徴などを複合的に考えて攻撃を組み立て、セッターがその時々で最適だと思うアタッカーにトスを配球します。

 

最初に今回のポイントに挙げたのは「  」です。

これは「スペース」を意味しています。相手のブロックシステムの穴をつき空いているスペースから攻撃を仕掛ける。またはアタッカーの攻撃種類によって意図的にスペースを作り出すといった工夫が必要になります。Vリーグを観戦する際にはセッターがどんな攻撃の組み立てをしてスペースを作り出そうとしているかにも注目して見てください!

 

 

次回は、攻撃の際に使われる、コート上の位置を示す「スロット」とセッターとアタッカーのタイミングを示すテンポ」について解説します。テンポについては、今シーズンコラボしているアニメ「ハイキュー!!」のキーワードのひとつでもある「マイナステンポ」で聞きなじみがあるかもしれません。
実際の試合でどのように使われるのか、ぜひお楽しみに!





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<Vリーグ公認アナリスト>

宮脇 裕史(Hiroshi Miyawaki)

2007-2014 JTマーヴェラス コーチ兼アナリスト

2014-2016 バレーボール・女子日本代表 サポートアナリスト

2017-    バレーボール女子アンダーエイジカテゴリー日本代表・アナリスト

      (公益財団法人日本バレーボール協会)

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