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【コラム】個人賞を解説!-サーブレシーブ成功率-

こんにちは、Vリーグ公認アナリストの宮脇です。

昨月のV1女子に引き続きV2女子がV・レギュラーラウンドを終え、群馬銀行グリーンウイングスがV・チャレンジマッチ出場を決めました。V1男子はパナソニックパンサーズのレギュラーラウンド1位通過が決まり、ファイナルステージ進出チームも出揃いました。
 

今回は、前回までのコラムに引き続き個人賞の一つである「サーブレシーブ成功率」について解説していきます。

 
 
 

サーブレシーブ成功率の算出方法

 
サーブレシーブ成功率は、レギュラーラウンドの技術統計データをもとに、チーム全試合数の70%以上の出場かつチーム全セット数の67%以上の出場セット数を満たす選手が対象になります。そのうち、出場セット数×2本以上の受数がある選手の中で「サーブレシーブ成功率」が最も高かった選手がサーブレシーブ賞を受賞します。

  

サーブレシーブ成功率は次の式で算出されます。

サーブレシーブ成功率={(成功数[優]×100)+(成功数[良]×50)}÷受け数

  

サーブレシーブ成功[優]…セッターの定位置に返り、すべての攻撃パターンが使えるサーブレシーブ

サーブレシーブ成功[良]…アタックゾーン内でセッターが複数の攻撃パターンを使えるサーブレシーブ

  

例えば、1試合に10本サーブレシーブを受け、成功[優]が5本、成功[良]が3本だったとすると、サーブレシーブ成功率は以下のようになります。

サーブレシーブ成功率={(5×100)+(3×50)}÷10=65%

  

試合ごとに公表される公式帳票(B帳票)の「サーブレシーブ」の項目で成功[優]と成功[良]の数字を確認することができますので、この数字にも注目してみて下さい。
 
 
 

トッププレーヤーのサーブレシーブ成功率は・・

 
下の表は、2019-20V.LEAGUE DIVISION1のサーブレシーブ成功率ランキングのTOP5(2/10現在)と、現在と同一の算出式で判定されている直近2シーズンのサーブレシーブ賞受賞者の成績をまとめたものです。

 

 

 
 
サーブレシーブ賞受賞者の成績を見てみると、男子はこれまでウルフドッグス名古屋(2018-19シーズンまでは豊田合成トレフェルサ)の古賀選手が受賞していましたが、今シーズンは2/10現在でサントリーサンバーズの鶴田選手が1位の成績をマークしています(2/10現在)。女子は久光製薬スプリングスの新鍋選手が3年連続で受賞しています。

 

今シーズンと過去のシーズンの結果を比較しやすくするためにサーブレシーブ成功率の対象シーズンでの偏差値を算出してみると、サントリーの鶴田選手は今シーズンは66.8となっています。過去の受賞者を見てみると、WD名古屋の古賀選手は2018-19シーズンでは69.9、2017-18シーズンでは70.4と他の選手の平均と比べて非常に高い成功率だったと言えます。古賀選手の数値からもわかるように、男子の場合は偏差値70に到達するような選手がサーブレシーブ賞に近づくのかもしれません。今年はサントリーの鶴田選手、ジェイテクトSTINGSの本間選手が上位争いをしており、僅差で鶴田選手のサーブレシーブ成功率が上回っています。

 

一方、女子では3年連続で新鍋選手が受賞していますが、今シーズンのサーブレシーブ成功率の偏差値は64.3、2018-19シーズンでは70.5、2017-18シーズンは63.6でした。2018-19シーズンでは男子同様に偏差値70超えとなっていますが、今シーズンと2017-18シーズンは偏差値64前後となっています。
 

久光製薬・新鍋理沙選手のサーブレシーブ集

 
 
 

受け数と成功率

 

最後に、ちょっと違う視点からデータを見ていきたいと思います。
 

サーブレシーブ賞の受賞は、チーム全試合数の70%以上の出場かつチーム全セット数の67%以上の出場セット数を満たす選手で、なおかつ出場セット数×2本以上の受数がある選手が対象となります。サーブレシーブ成功率が高い選手が、チームの中で一番多くサーブレシーブを受けたわけではありません。当然、相手からサーブで狙われた選手が、受数が多くなります。
多くのサーブレシーブを受け、かつサーブレシーブ成功率も高かったのは果たして誰なのか、下の図で明らかにしたいと思います。
  

  


 
  
上の図はサーブレシーブ成功率とチーム内受数率(各選手のサーブレシーブ受数÷チーム全体受数で算出)を示したものです。横軸がサーブレシーブ成功率、縦軸がチーム内受数率です。グラフ内の青い縦線がサーブレシーブ成功率の平均、青い横線がチーム内受数率の平均となります。


つまり、青い縦線よりも右側の選手は平均よりもサーブレシーブ成功率が高い選手。青い横線よりも上にいる選手は平均よりも受けているサーブレシーブの本数が多い選手になります。さらに、この青い線を基準に以下のように分類することができます。

 

青い2線を基準に・・・

①右上:サーブレシーブ成功率が高く、サーブレシーブを平均よりも多く受けている選手

②右下:サーブレシーブ成功率は高いが、サーブレシーブの受数が平均よりも少ない選手

③左上:サーブレシーブ成功率が平均よりも低いが、サーブレシーブを平均よりも多く受けている選手

④左下:サーブレシーブ成功率が平均よりも低く、サーブレシーブの受数が平均よりも少ない選手

 

サーブレシーブを受けた本数にも着目してみると、男子では鶴田選手や本間選手はサーブレシーブ成功率が高いのですが、受数は平均に近いことがわかります。カジースキ選手はチーム内でのサーブレシーブ受数が非常に高く、他の選手と比べても飛び抜けて相手にサーブで狙われていることがわかります。
 

女子の場合では、もちろん新鍋選手がサーブレシーブ成功率では他の選手よりも優れた数字を残しているので一番右端に位置しています。ただ、対戦相手が新鍋選手をサーブターゲットから外していることもあり、チーム内の受数はそれほど高くありません。J Tマーヴェラスの田中選手、P F Uブルーキャッツの和才選手はチーム内での受数も高く、約40%を受けていますが、平均よりも高いサーブレシーブ成功率を残しています。今シーズンのファイナル進出の立役者となった岡山シーガルズの金田選手は、表の右上のゾーンに位置している選手の中では1番サーブレシーブ成功率が高くなっています。

  

 

サーブレシーブ自体は得点に直接結びつくプレーではないため、サーブレシーブ成功率の良し悪しと勝敗の関係は必ずしも一致するわけではありません。ただ、セッターに完璧な返球をすることによって得点の可能性を上げることができるため、サーブレシーブは重要なプレーです。
これからV1男子はファイナルステージに入りますが、レギュラーラウンドのデータを参考に今後の残り少ない試合もお楽しみください!

   

次回は、来週末からいよいよV1男子のV・ファイナルステージが開催されますので、シーズン開幕前に行ったチーム技術統計データによる分析を、2019-20シーズンのV・レギュラーラウンドで行ってみたいと思います。昨シーズンと比較し、各チームにどのような変化があったのか、開幕前のコラムをぜひ振り返ってみて下さい。




<NEWS>
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<Vリーグ公認アナリスト>

宮脇 裕史(Hiroshi Miyawaki)

2007-2014 JTマーヴェラス コーチ兼アナリスト

2014-2016 バレーボール・女子日本代表 サポートアナリスト

2017-    バレーボール女子アンダーエイジカテゴリー日本代表・アナリスト

      (公益財団法人日本バレーボール協会)

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