【データコラム】技術統計データでV1男子レギュラーラウンドを振り返る
こんにちは、Vリーグ公認アナリストの宮脇です。
V1男子もレギュラーラウンドが終了し、今週末よりいよいよファイナルステージが始まります。そこで今回のコラムでは、レギュラーラウンドの技術統計データをもとに、4つの視点(「アタック効果率」「バックアタック効果率」「セット当たりのブロック決定本数」「サーブ効果率」)で各チームの昨シーズンからの変化について考察していきたいと思います。
※今回の分析ではVリーグ公式サイトに掲載されているチーム技術統計のうち、交流戦を含むレギュラーラウンドのデータを使用しています。
安定した決定力が強みのパナソニック
まず初めに、アタック効果率です。アタック効果率とは、アタック決定数からアタック失点数を引いたものを打数で割ることで算出する数値です。下の表はアタック効果率を偏差値で表したもので、青線が今シーズンの数値、グレーの線が昨シーズンの数値となっています。見方としては、グレーの線よりも青線が外側にあれば、昨シーズンよりも相対的に良い成績を出していることになります。反対に、グレーの線よりも青線が内側にあると昨シーズンよりも成績が落ちているということになります。
昨シーズン、優勝したパナソニックパンサーズは今シーズンも引き続き高いアタック効果率を誇っています。安定して高い攻撃力を維持できているのは、特定の選手に依存していないためではないかと推測します。現にアタック決定率の個人ランキングを見てみると、7位にようやく清水選手が出てきていますがクビアク選手(同13位)、久原選手(同16位)だけではなく、ランキング条件からは外れていますが、渡辺選手や山内選手など決定率が50%を超える選手が揃っています。対戦する相手からすると、マークが分散するので対応が難しいのではないでしょうか。
昨シーズンより高い成績を出しているのは、J Tサンダーズ広島、堺ブレイザーズ、ジェイテクトS T I N G S、F C東京です。JT広島の小野寺選手はVリーグ日本記録も塗り替える65.7%の決定率を残しスパイク賞を獲得しました。チームはレギュラーラウンド3位通過となりましたが、アタック決定率の個人ランキングで3位となっているエドガー選手や6位の陳選手らの活躍によってファイナル進出も見えてきそうです。
堺も昨年より成績を上げてきており、モーリス選手、千々木選手らがチームを牽引しています。ジェイテクトは昨年より大幅に攻撃力が上がっています。個人ランキングでは2位に饒選手4位に西田選手が名前を連ねています。ジェイテクトはレギュラーラウンドを2位で通過しましたが、攻撃力もさることながら、カジースキ選手のディフェンスでの貢献も大きいでしょう。前回のコラムでサーブレシーブ成功率とチーム内受数率を紹介しましたが、カジースキ選手はチーム全体の半数近くのサーブレシーブを受けているにもかかわらず大きく崩れることなく攻撃に繋げチームを支えています。
JT広島・小野寺選手とエドガー選手のアタック パナソニックの多彩な攻撃陣
バックアタック効果率の低迷がファイナルステージ進出を阻む?!
次にバックアタック効果率で各チームのパフォーマンスを見ていきたいと思います。昨シーズンの振り返りについて書いたコラムでは、上位進出チームほどバックアタックの決定力が高い数値を残していました。やはり今シーズンもその傾向があるようで、バックアタックの決定力があるチームがファイナルステージ進出を決めているようです。
昨シーズンに比べてサントリーサンバーズと堺は大きく成績を上げていることがわかります。サントリーは季選手やムセルスキー選手らの外国籍選手が大きく数字を伸ばしています。一方、堺は千々木選手、樋口選手の日本人選手がバックアタックで高い決定力を発揮しています。V C長野もバックアタックでの決定力が良くなっています。ストレジェク選手がチームの柱として活躍しているようです。
パナソニック、J T広島、東レアローズは昨シーズンと比べるとバックアタックでの成績は落ちていますが、それでもパナソニックとJ T広島は平均の偏差値50よりも高くなっています。東レは昨シーズンよりも数値が下がり、なおかつ偏差値50を下回ってしまっています。結果的にレギュラーラウンド6位となりファイナルステージ進出を逃しています。
サントリー・季選手のバックアタック 堺・千々木選手のバックアタック
ファイナルステージ初戦はブロック対決!
続いてセットあたりのブロック決定本数について解説していきます。
JT広島は昨シーズン偏差値70と非常に高い成績を残しました。今シーズンはやや昨シーズンを下回ったものの全体としては高い水準に位置しています。スパイク賞に続きブロック賞も受賞した小野寺選手がファイナルステージでは対戦相手の大きな壁として立ちはだかりそうです。
ブロックでもサントリーと堺が昨シーズンと比較し躍進しています。堺は出耒田選手が個人ランキング2位とブロック賞にはわずかに届かなかったもののセット平均0.71本と素晴らしい活躍を見せています。前回のコラムで、「(堺は)今シーズンはゴーダン監督が就任したことでより組織的なディフェンスが構築されブロック力だけではなく総合的にチーム力が上がってくるのではないかと予想しています。」と書きましたが、それが数字となって表れています。
ファイナルステージの初戦はこのサントリー対堺の対戦となりますが、両チームのブロックは必見です。ウルフドッグス名古屋とF C東京も、昨シーズンと比べ相対的にブロックがやや向上しています。WD名古屋の傳田選手はセット平均0.57本とパナソニックのクビアク選手と並んで全体3位となっています。F C東京は栗山選手がチームを牽引したシーズンとなったようです。
サントリー・ムセルスキー選手のブロックポイント 堺・出來田選手のブロックポイント
サーブ効果率偏差値70の立役者は?!
最後にサーブ効果率について解説します。まず特筆すべきはジェイテクトのサーブ効果率です。昨年もサーブ効果率の偏差値は60と高かったのですが、今年はさらに上がって偏差値70となっています。サーブ賞に輝いた西田選手に続き、個人ランキング2位にはカジースキ選手が並び、サーブ効果率ランキングの1位、2位をジェイテクトが独占しています。西田選手はレギュラーラウンドにてノータッチとエース合わせて70点もサーブで得点を取っています。つまり約6本に1本のペースでサービスエースを取っていることになります。これは相手からすると脅威でしかありません。
ただミスする確率も高く3〜4本に1本は失点になっています。一方カジースキ選手は失点率が西田選手よりも低くサーブ効果率が高いため、相手としてはカジースキ選手も厄介なサーバーであることは間違いありません。JT広島も昨シーズンに比べサーブが良くなっています。個人ランキング6位のエドガー選手を筆頭に、小野寺選手や深津選手も高いサーブ効果率を残しています。昨シーズンのJT広島はサーブ効果率の偏差値50で平均的でしたが、今年は偏差値60まで上がってきています。ファイナルステージでは昨年の雪辱を果たす可能性は十分にありそうです。
ジェイテクト・西田選手のサービスエース ジェイテクト・カジースキ選手のサービスエース
今回はV1男子レギュラーラウンドの技術統計データをもとにレギュラーラウンドでの各チームの成績について偏差値で振り返ってみました。いよいよ今週末にはV1男子ファイナルステージが行われます。2月22日にはバックアタックとブロックで好成績を収めていたサントリーと堺ブレイザーズが対戦します。今回のレギュラーラウンドのデータと一緒にファイナルステージも楽しんでください!
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<Vリーグ公認アナリスト>
宮脇 裕史(Hiroshi Miyawaki)
2007-2014 JTマーヴェラス コーチ兼アナリスト
2014-2016 バレーボール・女子日本代表 サポートアナリスト
2017- バレーボール女子アンダーエイジカテゴリー日本代表・アナリスト
(公益財団法人日本バレーボール協会)
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