【データコラム】V1女子ファイナルの見どころ解説を振り返る
今回のコラムでは、1月26日に行われたV1女子ファイナルについて振り返りたいと思います。
ファイナルの会場では、今シーズン初の試みとしてV1女子ファイナルの試合前に10分間の「見どころ解説」を行いました。
そこでファイナルのJ Tマーヴェラスvs岡山シーガルズの見どころとして3つ紹介しました。
①ドルーズ選手との攻防
②岡山シーガルズの粘り
③頭の中のコート
この3点が、ファイナルの試合で実際にどのようになったのか、1つずつ振り返っていきたいと思います。
※会場での解説は、V.TVのアーカイブ>特典映像よりご覧いただけます!ぜひこちらを先にご確認下さい。
ドルーズ選手との攻防はJ Tに軍配
まず、ドルーズ選手はJTで中心となっている選手で、レギュラーラウンドのアタック決定率も49.1%で全体2位に位置していました。JTと岡山は交流戦で1試合戦っており、セットカウント3−0でJTが勝利しています。その際、ドルーズ選手のアタック決定率は約60%で岡山はドルーズ選手にかなり苦しんだことが数字から伺えます。ファイナルでも間違いなくドルーズ選手がキーマンとなるとは誰もが予想でき、岡山としては交流戦の敗戦からどのようにドルーズ選手のアタック決定を防ぐかが鍵となっていました。
ドルーズ選手はどこにでもアタックが打てる選手ですが、特にストレートを得意としている選手です。ここ最近の試合を見てもストレートでの得点がキーポイントとなり、どのチームも工夫してディフェンスを行なっていました。ファイナルでの岡山もドルーズ選手に対してどのようにブロックを跳び、レシーバーを配置するかという攻防に注目していました。
結果的に、V1女子ファイナルでのドルーズ選手のアタック決定率は49.3%となり ました。岡山はドルーズ選手に対しブロックはストレートを開けているケースが多く、スパイクレシーブに定評のあるリベロの楢崎選手がレシーブで対抗していました。前回の交流戦の時に比べると決定率を下げることはできましたが、ドルーズ選手を完全に封じるまでには至らず最終的にはJ Tがフルセットで勝利しています。
JT・ドルーズ選手のスパイク
岡山シーガルズのディフェンスはファイナルでも健在
次に岡山シーガルズのディフェンスについてです。岡山は以前からディフェンスに定評のあるチームです。落ちそうで落ちない岡山の「つなぎ」の技術はデータには表しにくい部分ですが、私は岡山の「つなぎ」の良さは「レシーブしたボールの行方」にあると思っています。
岡山は、レシーブしたボールがレシーブした選手の周辺に留まるケースが多く見られます。無理にセッターの定位置に返そうとしたり、ネット際に持っていこうとすると、セッターが間に合わなかったり、ネットに当たったボールの処理が難しく、かえってカバーしにくくなってしまいます。レシーブをしなかった選手は相手から打たれたスパイクを追って体の向きを変え、レシーブした選手の方を向きますが、視線の先にレシーブされたボールがあるとスムーズにカバーすることができることができます。そこが岡山のつなぎのよさであり、ボールが落ちそうで落ちない要因ではないかと思います。
岡山シーガルズのディフェンス
選手は目に見えているコートよりも大きなコートで戦っている
最後に「頭の中のコート」についてです。
バレーボールのコートは18m×9mです。相手コートの9m×9mの中にボールを多く落とした方の勝利です。ですが、両チームのスパイクを見てみると、コートの白線に囚われないスパイクを放っているケースが多々あります。JTの林選手や岡山の金田選手などスパイクを打つ際、ブロックの指先を狙って打っています 。この時、もしブロックがいなければ確実にコートの外を目掛けて打っていることになります。
JTマーヴェラス・林選手のスパイク 岡山シーガルズ・金田選手のスパイク
私たちの目に見えているコートは18m×9mですが、もしかしたら選手たちの頭の中はその枠に囚われずもっと大きなコートで戦っているのかもしれません。
今週末にはいよいよV1男子ファイナルです。先週のセミファイナルではジェイテクトがサントリーを3−1で下しファイナル進出を決めました。ディフェンディングチャンピオンのパナソニックとファイナル初進出のジェイテクトの決勝戦はきっと白熱した試合展開になるでしょう。
V1男子ファイナルでも試合前の見どころ解説を行う予定でしたが、新型コロナウイルス等感染症対策により無観客での開催となったため、会場でお話する予定だった内容を事前にコラムの形でお届けしたいと思っています。試合前にぜひチェックしてDAZNやNHK-BS1で試合を楽しんで下さい!
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<Vリーグ公認アナリスト>
宮脇 裕史(Hiroshi Miyawaki)
2007-2014 JTマーヴェラス コーチ兼アナリスト
2014-2016 バレーボール・女子日本代表 サポートアナリスト
2017- バレーボール女子アンダーエイジカテゴリー日本代表・アナリスト
(公益財団法人日本バレーボール協会)
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