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【データコラム】V1男子ファイナルの見どころ解説を振り返る

こんにちは、Vリーグ公認アナリストの宮脇です。
 

今回のコラムでは、先日行われたV1男子ファイナルについて振り返ってみたいと思います。

ファイナル前に書いた前回のコラムで、パナソニックパンサーズ対ジェイテクトSTINGSの試合は「攻撃の的を絞らせないパナソニック」vs「攻撃の的が絞れても止められないジェイテクト」という構図になるのではないかと紹介しました。

結果的にフルセットの末、ジェイテクトが初優勝を収めましたが、なぜジェイテクトは優勝することができたのかについてアナリスト的視点から要因を探っていきたいと思います。

  
 
 

 サーブで先手を取ったパナソニック

 
第1セット、パナソニックはジェイテクトのカジースキ選手をサーブで攻め立て先手を取ります。パナソニックは序盤からカジースキ選手をサーブで執拗に狙う戦略を取っており、ジェイテクトのサーブレシーブを大きく崩すことで主導権を握りました。
 
実際、カジースキ選手は第1セットでは22本中16本のサーブレシーブを受けていました。以前コラムでも紹介したように、カジースキ選手は、レギュラーラウンドではパナソニックに限らず他のチームからもサーブターゲットとされることが多い選手ですが、他の選手と同程度のサーブレシーブ成功率を残していました。「サーブで狙われるが崩れにくい」選手のはずでしたが、ファイナルの第1セットはカジースキ選手が想像以上に崩れ、第1セットのサーブレシーブ成功率は43.8%と普段より20%程パフォーマンスが悪い結果となっていました。
 

しかし試合が進むにつれカジースキ選手のサーブレシーブが次第に安定するようになり、速攻を使える機会が増えてくると、チーム全体のアタック決定機会も増え、チームに勢いが出てきました。パナソニックは第1セットではカジースキ選手狙いというサーブ戦術がハマった形となり、ノックアウト寸前まで追い詰めましたが、第2セット以降はカジースキ選手のサーブレシーブ成功率が最終的に50.9まで戻り復調したことにより、試合はフルセットまでもつれることとなりました。



ジェイテクト・カジースキ選手を狙うパナソニック・深津選手
  
 
 

  

 アタック決定率ではパナソニックが上回っていたが・・・

 
ファイナルの公式帳票(B票)を見てみると、全体のアタック決定率ではジェイテクトが51.9%に対し、パナソニックが53.5%と、パナソニックの方がわずかに上回っていました。もちろんセット毎にみると必ずしも全てのセットでパナソニックが上回っているわけではありませんが、試合トータルではパナソニックの方が僅差で高い結果となりました。

個人に目を向けると清水選手の活躍が試合の勝敗に影響を与えているように見えます。これまでのレギュラーラウンドのジェイテクト 戦でのデータを振り返ると、パナソニックがジェイテクトに勝利した時、清水選手のアタック決定率は50%を超えています。一方で、レギュラーラウンドでジェイテクトに敗戦した時の清水選手のアタック決定率は37.5%でした。そして、今回のファイナルでの清水選手のアタック決定率は46.3%と50%を下回っていました。

ジェイテクトとしてはパナソニックの得点源となる清水選手のアタック決定率を抑えられたというのは戦略勝ちなのかもしれません。ジェイテクトは清水選手のライトからのアタックに対して、どちらかというとクロス側にブロックを寄せているようでした。そのブロックから更にクロス側に打ったところにはレシーバーを配置して決定を抑えているようでした。

バックアタックに目を向けると、両者に大きな差が生まれています。ジェイテクトのバックアタック決定率は68%、一方パナソニックは38.9%でした。ジェイテクトは西田選手しかバックアタックを打っていませんでしたが、パナソニックは最後まで西田選手のバックアタックを攻略することができませんでした。
 

ジェイテクト・西田選手のバックアタック ※3本続けて御覧ください
 
 

 

 ファイナルステージで精度を上げてきた西田選手のサーブ

 
最後に西田選手のサーブについて触れたいと思います。
レギュラーラウンドでは西田選手のサーブ効果率は19.8%でした。サービスエースの数はノータッチ、タッチエース合わせて70本です。約6本に1本のペースでサービスエースを取っている計算になります。

ファイナルステージでジェイテクトと対戦したサントリーとパナソニックも、当然西田選手のサーブには警戒していたはずです。しかしセミファイナルのサントリー戦では19本中5本のサービスエース、ファイナルのパナソニック戦では22本中4本のサービスエースを取っています。ファイナルステージの2試合では、約5本に1本のペースでサービスエースを取っており、レギュラーラウンドよりもさらに高い確率でサービスエースを取っていました。


ジェイテクト・西田選手のサービスエース
 

今シーズンのV1男子はまさにサーブの重要性を再認識させられるような戦いだったと思います。Vリーグもジェイテクトの初優勝という形で終わり、次はいよいよ東京オリンピックに向けて日本代表シーズンに入ります。国内で活躍した選手たちが大きな国際大会で活躍する姿を期待します!


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<Vリーグ公認アナリスト>

宮脇 裕史(Hiroshi Miyawaki)

2007-2014 JTマーヴェラス コーチ兼アナリスト

2014-2016 バレーボール・女子日本代表 サポートアナリスト

2017-    バレーボール女子アンダーエイジカテゴリー日本代表・アナリスト

      (公益財団法人日本バレーボール協会)

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